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司法書士活動日誌 あいおいくんがゆく!

2020年06月22日 [清水 敏博の活動日誌]

こころに晴れ間を くらしに活力を   遺言 編 vol.3「事例から学ぼう」

みなさま こんにちは! 司法書士の清水です。
 当事務所は、2001年に事務所を開業してから20年に渡り、年間800件以上のくらしにまつわる様々な法律相談を受けてまいりました。このブログは、これまでの20年間の実際の経験にもとづき、みなさまのより良いくらしにお役立ていただくためのブログです。
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 今回のブログは、事例から学ぶ(遺言編)というテーマで、実際に当所にご相談があった事案をもとにお話をしたいと思います。

 <事案の概要>
 ○ご相談者  田中 博さん(仮名) 男性 82歳
 ○ご家族構成  数年前に妻に先立たれ配偶者なし、前妻との間に子供2名ただし、長期間親交なし
 ○職   業  無職(元 建築関係自営業)

 ○事案の概要 
(1)博さんは、数年前に妻に先立たれ、足が悪かったので介護サービスを利用し自宅で独居生活をしていました。

(2)ある日、ヘルパーが自宅を訪問したところ、体調不良で動けなくなっていたところを発見され病院に救急搬送されました。病院で精密検査を受けたところ、末期のがんが見つかり、余命宣告を受けてしまいました。

(3)博さんの相続人は前妻との間に子供が2名おりましたが、離婚後はまったく親交がなく、自分亡き後の財産についての悩みを抱えておりました。そこで、ケアマネージャーから紹介されたということで当事務所にご相談がありました。

(4)急遽、ご本人に面会するとともに、詳しいお話をご本人及び医療関係者から聞き取りを行いました、ご本人は意思疎通は問題ないものの、予断を許さない状況であり、速やかに対応する必要がありました。

(5)ご本人のお気持ちでは、ご自身が亡くなった際には財産の大半を自分が卒業した学校やお世話になった近隣の友人に渡したい、残りを前妻との間の子供たちに均等に渡したいとのことでした。ただし、体調の悪化もあり、まだはっきりとは決めかねているところもありました。

(6)体調は日に日に悪化していき、時間とのたたかいの様相を呈しました。私はできる限りご本人の想いがかたちになるようアドバイスを行い、自筆証書遺言(ご本人が直筆で本文、日付、氏名及び押印する方法の遺言)を作成しました。その後病状が急速に悪化し、3日後に亡くなりました。
     
  <問題点>
(1)お話しをお聞きしていると、ご本人のお気持ちの中には、他にもお世話をしてくれた親族にお渡ししたい方がいたり、また長年会っていない子供たちに対する何かしらの想いを伝えたいように感じました。しかし、自身の想いを整理するよりも体力の衰えの方が早く、結局それらの想いを遺言に書き記すことができませんでした。

(2)一般的に利用される遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言の2種類あります。自筆証書は、手軽に作成できる反面、誤記や不明瞭な記載、また書き間違えがあることも多く、執行する際に支障が出たり、遺言作成時の能力の有無を巡って後に相続人から無効の争いが生じる場合があります。     
また、民法改正による法務局保管による場合を除き、家庭裁判所に検認という証拠保全手続きが必要になります。それらのデメリットがあるので、専門家の立場からは、遺言の内容が簡単であったり(例えば、妻に全財産を相続させる など)、かつ相続人間に紛争性がない場合以外は、検認の必要がなくすぐに執行に入れる、また公証人という法律の専門家や証人2名が関与し信頼性が高い「公正証書遺言」を勧めしております。

本件は残された時間がなかったので、作成すること自体を最優先せざる得ず、信頼性の高い公正証書遺言を作成することができませんでした。 
作成した自筆証書の内容は、私が確認やアドバイスをしたので問題はございませんでしたが、亡くなった後に家庭裁判所への検認手続きには1カ月程度の時間を要するなど執行に時間がかかり、またそれら手続きのための費用も掛かってしまいました。

(3)前妻との間の2人子供は本来は各2分の1の法定相続分があるものの、
   遺言の中で財産の大部分を卒業した学校や知人に遺贈する内容でした。したがって、子供たちはそれぞれ遺留分(原則 法定相続分の2分の1の割合)4分の1を若干上回る程度の金銭しか受け取ることができず、とても不満が残ってしまいました。

  <本事案のポイント>
(1)自筆証書遺言による場合には、2020年7月10日以降に順次はじまる法務局での保管制度を利用すると、相続発生後に検認手続きが不要になるので、残されたご家族等の負担が減ることが期待できます。また、すぐに遺言の執行ができるので、簡単な内容であったり、トラブルがないような場合には、ご活用を検討されるとよろしいかと思います。
  ただし、法務局による保管制度は、遺言の形式的要件はクリアになりますが、遺言の内容まで相談にのってくれるものではないので、トラブルが予想されるご家庭は、事前に専門家にアドバイスを受けるなどされると安心です。

(2)本件の前妻の子供たちもそうでしたが、トラブルの多くは遺言者の気持ちや考え、想いが伝わらなかったことで生じます。したがって、遺言を作成する際には、どうしてこのような内容にしたか、また、残された家族への想いなどを記載することがトラブル予防にとても有効です(付言と言います)。
同様の趣旨から、遺言とは別に家族を集めて自分の考えを予め言葉で伝えておいたり、お手紙を書いたり、ビデオレターを残すなどすればトラブル予防に大きくつながりますので、遺言とともにそれらも活用してみてください。

(3)本件では、他に渡したい方や伝えたかった想いがあったようですが、残された時間の関係で作成自体を最優先にせざる得ず、残念ながらそれらは書き記すことができませんでした。ご本人に気持ちや想いのすべてを叶えられる内容まではたどり着かなかったように思います。
ご相談にお越しになる多くの方は、本件のように重篤な病気などかかって急いでご相談に来られます。
しかし、このような状況では、遺言を作成すること自体を優先せざる得ません。最後のメッセージの意味合いでもある遺言の性質から、できればお元気なうちに、例えば、人生の節目に(定年退職した、子供たちが全員巣立ったときなど)、これからの晩年の生活を考えるときに、万一があったときのことも含めて、時間的余裕をもって準備することをお勧めします。そうすれば、きっとご自身やご家族にとってより良い遺言となることでしょう。

今回のブログは実際にあった事例に基づき、上手な遺言のつくり方についてお話させていただきました。ぜひ遺言をつくろうと思い立ったときのご参考になさってください。

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